六ヶ所再処理工場解体新書 連載1

再処理工場を解体してみて                2009年2月18日
                                   山田清彦
1.連載開始に当たって
  最新の完工予定が8月に延期されたので、当面は再処理工場関連の問題が遠ざかった
ような気がする方々が多いのではないだろうか。特に、操業を心待ちにする青森県副知
事の蝦名氏は、あたかも人事のように、トラブル事例が発生しても県として厳しく追求
することがない。安全については国任せの姿勢を貫き、県は関知しないという態度だ。
日本原燃の事業開始に際して安全協定を結び、安全確保を要請してアクティブ試験を始
めたのに、それを忘れているのは許せない。このような態度を貫くと、本格操業の前に
締結する安全協定が実効性がないことを、自ら示す結果になるのにも気づかないのは困
ったことだ。また、再処理に反対する私たちにしても、操業が遠のいたことで、何か闘
う焦点が定まらないような気になってしまいがちかもしれない。
  ところが、日本原燃の毎月の定期報告を見れば、アクティブ試験中に様々な放射性物
質を抽出し、製造し、核燃料廃棄物を溜め込み、核のゴミを海と大気に放出しているの
である。勿論、本格操業の際の放出量に比べて少ないのではあるが、試験操業でも出て
いることには改めて注意すべきではないだろうか。要するに、8月まで完工予定が延び
たことで、操業阻止行動の準備が延びたと喜べない状況にある事実から目をそむけない
必要を訴えたいと、私は思うのだ。
  そこで、今回は本格操業前に、再処理工場の機器についておおよそ理解していただき
たく、日本原燃発行の「六ヶ所再処理工場の概要」を手本にして構造について解説して
みたいと思う。というのは、再処理工場の役割について概要を語ることが出来ても、個
別の機器の役割についての理解は難しい。何しろ事業指定申請書を見ても、詳しいこと
はほとんど紹介されていない。何かトラブルがあって、それがマスコミを通じて報道さ
れてから、ようやく細かな構造が示されるという場合が多い。トラブル報告書によって
分かることが多く、トラブルが起きない場所については未だ情報がないと言える状況が
続いている。
  ただし、トラブルが起きてから分かることが多いとはいえ、そのトラブルが破局的で
あれば、大事故に繋がりかねない。そんな大事故が起きてから、原因究明や事故対策が
整うのを待って、全容解明されても遅いのである。
 これは、チェルノブイリ原発を見学したときに感じたことだが、事故が起きなけれ
ば、無残な事故現場の再現モデルを見ることもないだろう。どこの原発PR館でも、原
発の展示は奇麗にされている。しかし、その内側がどんなものかは、なかなか分かりづ
らい。事故現場の再現モデルを見て、初めてその非人間性が明らかになる。
  以上のことから、「六ヶ所再処理工場の概要」でも、再処理工場の役割と構造をあく
まで大まかに紹介しているだけである。それでも、今後何らかのトラブルが発生してか
ら詳細が分かることもあろうが、現段階で分かることについてある程度理解出来るので
はないかと思う。
 機器の構造の数字的なこと(スケール、個数、容量等)については、ほとんど記載が
無いので、事業申請書に当たって拾った。ちなみに、再処理事業指定申請書の提出日は
日本原燃のHPにも掲載されてるが、何度も更新されているのでそのすべてに当たり、
変更があるものについては拾い直しの作業を行った。その作業をした結果、@平成元年
3月30日付け、A平成3年5月15日付け、B平成8年4月26日付け、C平成13
年7月17日付けの4つに記載がある事が分かった。その他の日付のものには、そのよ
うな記載がなく、指定申請書の変更届けである。
  もともとがマニアックな、再処理オタクのためのHPを立ち上げたつもりであるが、
更新が遅れていたのを心からお詫びしながら、今後の定期更新(少なくても毎週1回の
更新)を閲覧いただきたいと思います。

  注:「六ヶ所再処理工場の概要」は日本原燃株式会社が作成したもの(A4版で、フ
ルカラー、32ページ)で、希望者には配布されるはずです。日本原燃のホームページ
から、住所が分かると思いますが、電話で0175−71−2000(代表)に問い合
わせてみて下さい。
 
2.「概要」の全体構成について
  「六ヶ所再処理工場の概要」は表紙と裏表紙を除くと30ページ。目次を紹介すると
以下のようになります。

  はじめに                 1
  T 計画のあらまし            2
  U 原子燃料サイクルと世界の再処理工場  3
  V 再処理工場              5
     全体工程              5
     使用済燃料受け入れ・貯蔵      7
     せん断・溶解            9
     分離               11
     精製               13
     脱硝・製品貯蔵          15
     酸及び溶媒の回収         17
     気体廃棄物            18
     液体廃棄物(低レベル廃液処理)  19
     液体廃棄物(高レベル廃液処理)  20
     固体廃棄物            21
     中央制御室            23
     分析設備             23
  W 安全対策              24
  X 技術開発研究所           26

  この「概要」の中で、私たちが興味を感じるのは、各機器の貯蔵容量だと思います。
現時点では固化体製造作業が中断していますが、じゃあ、どのくらいまで廃液が貯蔵さ
れているのかが分からないのです。それが漏れ出たというトラブルも起きましたが、ど
のくらいタンクに残っているのかは報道されませんでした。
  1月26日に、県庁に申し入れた際、県庁の職員は「国会議員の質問に答えて、24
0立方メートル残っているというのを見た」と答えました。でも、その程度の情報は事
業者から確認しておくべきと考えています。そこで、今一番ホットな話題は高レベルガ
ラス固化関連ですから、その廃液の保管関連情報から順次掲載したいと思います。

連載2


トップへ
戻る