3.六ヶ所再処理工場の被ばく事例


 2006年3月31日にアクティブ試験入りした日本原燃が発表した被ばく事例は、
2006年5月19日頃、同年6月24日、2007年7月4日、同年8月23日の4
件あった。このうち、1件(2006年6月24日の事例)は後に被ばくしてなかった
とされたが、被ばくしたというニュースが広がり、2006年7月19日に県議会全員
協議会を開催させるだけの大きな関心を持って迎えられた。

 特に、2006年7月20日付けの東奥日報にあるように、原子力関係者の石川迪夫
氏の発言内容は、与野党の議員から批判が集中した。石川氏が体内被ばくを「お百姓さ
んに泥が付くのと同じ」と例えたのは、原子力関係者にとって見れば作業中の被ばくが
当たり前とされている現実を示したかったのだと思う。だが、彼の思惑は理解されず、
核燃施設に賛成の立場に立つ与党の議員からも批判が出たのは、県民にとっては被ばく
労働が特別危険な作業に見えることを示している。

 2006年5月19日頃に発生したとされる1件目は、管理施設から被ばく者が退出
して数日経ってから被ばくが判明している。つまり、管理施設から出て数日経ってか
ら、被ばくしていたことが分かったということである。このケースは、管理施設からの
退出時の放射能測定態勢に不備があることを示している。

 なお、日本原燃が放射性物質を取り扱う事業者でありながら、労働者に被ばくを低減
する方法を教えないできたことは、実に信じられないことである。しかし、それが現実
であることを示したのが、3件目の被ばく事例である。

 2007年7月4日の事例では、汚染した手袋を外す際の手順を誤ったことが原因
で、両足首付近に50mSvを超えて被ばくが確認された。この原因は、手袋や長靴な
どを脱ぐ際の詳細な手順が明確でなかったことであった。そこで、日本原燃は再発防止
のために、「ケース・バイ・ケースの手順を定め周知する」として、7月6日に安全大
会を開催して、再発防止と労働災害ゼロを目指す決議を採択した。

 2007年8月23日の事例は、着替え場所での被ばくであり、作業着に放射性物質
が付着した状態での出入りが常態化していることを示している。この場合は、作業着を
着脱する場所が一緒なので、作業前の着替えと作業後の着替えの場所が同一なので、作
業着に付着した放射性物質が床に落ち、それを踏んだ作業者の足の裏から50mSvを
超える被ばくが確認されたというのだ。このような被ばくは、作業場に入る前の着替え
場所と、出てきてからの着替え場所を別にすれば避けられることであるが、そのような
ことも徹底されていないことを示している。

 いずれの場合も、今後は改めるとしているが、このような被ばくを容認する空気が事
業者の側にありはしなかっただろうか。これは日本原燃の職員の構成による、一種の人
種差別的な企業感覚が背景にあると言ってもいいのだろう。
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 1.被ばく労働問題について
 2.東海再処理工場での被ばく事例
3.六ヶ所再処理工場の被ばく事例
 4.なぜ「その他」に被ばく者が多いのか
 5.漏水プールによる被ばく者の死亡
  (1)六ヶ所再処理工場での労働者の被ばく死
  (2)横行する被ばく線量のごまかし
  (3)許容線量は安全か
  (4)漏水プールの補修作業での被ばく
 6.被ばく線量の安全裕度とは
 7.青森県知事が被ばく労働を進めるわけ
 8.被ばく労働をなくすため、原子力産業と決別せよ


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