(2)横行する被ばく線量のごまかし
一つは、被ばく作業現場に於いて、実際の被ばく線量を低く申告するケースである。
これは、原子力発電所での定期検査等で現実に行われているケースとして、ルポライタ ー 樋口健二著の「闇に消される原発被曝者」に紹介しているので、次に引用する。
@ p64 8行目から15行目に、アラームメーターが鳴っても仕事を続ける状況が
紹介されている。
「作業は大小のパイプ磨きでした。ポケット線量系とフィルムバッチ、TLD(熱蛍
光線量計)を持ち、アラームメーターを首から吊して、服装は赤服に赤帽子、手袋、靴 下、それに宇宙人のかぶるような全面マスクをつけて原発に入ったとです。炉心部は熱 く、30度から40度近くになるので、体中がすぐ汗びっしょりになり、全面マスクが 曇り前が見えず、しかも息苦しくてとても我慢ができませんばい。
5分ないし10分もすれば、50ミリレムにセットしたアラームメーターがピーピー
鳴り仕事はおしまいだと知らせてくれるとです。
すぐに交替しなければならないので仕事にならん。時には、アラームメーターを取替
えて入ったこともあったとです。今、考えると放射能を余計、浴びたということですば い。」
A p65 16行目から p66 15行目に、アラームメータを2個持つことが紹
介されている。
「福島原発では最初身体検査を受け、その結果が出るまで3週間安全教育を受けまし
た。その後3人とも廃棄物処理建屋の廃液タンクが三つ並んだ部屋に入れられ、同じ作 業させられました。
廃液タンクの足場かけ作業です。足場板やいろいろな道具の運搬です。1分か3分で
100ミリレムにセットしたアラームメーターがビービー鳴るとです。だからアラーム メーターを二個持って入りました。浜岡ではとても考えられんことです。しかも毎日、 ポケット線量系、熱蛍光線量計、フィルムバッチまで2個ずつ持って入るとです。
タンク室の入口に放射能の避難場所をつくるように東電から指示され、鉛板で2メー
トル四方の囲いを作り、そこで待機していました。
アラームメーターは100ミリレムにセットし、鳴れば一応交替しました。それでは
仕事にならないので、少しはいいやと仕事を続けました。
左右のポケットに入れたアラームメーターが、たえずビービー鳴るものですから、こ
んなに放射を浴びていいのかなぁと感じていました。浜岡では50ミリレムとか40ミ リレムでもアラームが鳴れば仕事を一応やめていたんで不安になってしまいました。
聞くところによると濃縮タンク内に落ちたら、放射能が何十万レムというから死亡は
間違いにないそうである。それほど放射能を浴びた人間は外に出すわけにいかので、コ ンクリートで固めてしまうという話だ。あとは、会社が遺族からその人間を買うという ことで処理するということです。なんとも恐ろしい話です。普通、一日に100ミリレ ムを越せば、その日は仕事は終わりなのに、午後からは30ミリレムのアラームメータ ーを持たされて、別の作業に回されるんだから、人間扱いをしていないなと思うとりま した。」
以上に紹介したように、1日の被ばく線量限度を超えても、作業を中断できない場合
には、限度を超えて被ばくすることがあったかもしれない。
また、ここには細かく紹介し切れないが、線量計等を被曝量の少ない場所に置いて、
作業を長く行うケースもあったことや、他人の線量計を持たされたことなど、様々な手 口が紹介されている。
もし喜友名さんの働いた現場でも同様の方法が取られたとすれば、被ばく手帳の数字
が正確な被ばく量を示していないことになる。そのようなごまかしがないというのであ れば、各事業者が持っている被ばく管理データの一切を公表すべきである。
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5.漏水プールによる被ばく者の死亡
(2)横行する被ばく線量のごまかし
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